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◆論評:第3回(1991年度)

【受賞者】 末原達郎

【受賞対象業績】 『赤道アフリカの食糧生産』同朋社出版, 1990年。

【講評】
  末原達郎氏は,1978年よりザイール共和国を中心とする熱帯地域で数回現地調査をおこない,とくにバンツー系農耕民を対象として,おもに農業技術,農業形態,土地保有形態などの研究資料を収集してきた。今般出版された「赤道アフリカの食糧生産」は既発表の諸論文を集成したものであるが,その中心は,ザイール東部の山地に居住する焼畑農耕民テンボ人の農業経営・土地保有形態の綿密な実態調査の報告である。とくに播種・収穫時の共同労働組織の分析により,労働交換と性的分業家族構造等の社会制度との対応を検討して,個人単位の労働の等質的交換が生産の平準化を生むことを明解に論証した。さらにテンボ人の近隣に居住するシ人,レガ人との比較調査から,市場経済の影響の浸透の仕方と,土地保有形態,労働力の利用形態の相違との関連を見いだし,これら三者の農耕社会の伝統的構造とその変容を分析した。これは広くアフリカ農業を,商品作物の導入に伴う農業形態の変化と伝統的土地保有との緊張関係を軸に把握する,同氏の持論を支持する事例となった。同氏の研究の特質は農業形態の精密な実態調査を基礎としているが,単に農業経済学の分析にとどまらず,家族,単系血縁集団,首長制など社会構造との関連において分析する文化人類学の正統的な手法を駆使する点にある。本書はいまだ数少ない熱帯森林地帯の農業調査報告の例として,日本のアフリカ研究の水準を高めたもので,その学術的意義は大きいと評価できる。また,アフリカをはじめとする第三世界における食糧問題や,森林破壊などの環境問題などの実践的な課題にも,かずかずの示唆をもたらす著作であると考える。以上のような理由で同著を,研究奨励賞の受賞対象としての資格を備えるものと推薦する次第である。


  

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