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◆論評:第8回(1996年度)

【受賞者】 栗本英世

【受賞対象業績】 “Coping with Enemies: Graded Age System among the Pari of Southeastern Sudan”, Bulletin of National Museum of Ethnology, 20(2), 261-311, 1995.

【講評】
  本論文は,スーダン南部におけるパリ社会の階梯式年齢組織の構造と機能ならびにその歴史的展開を,主として民族誌的資科に依拠しつつ文献資料をも幅広く渉猟し,「社会内外の敵」に対処する形で軍事的な年齢組織が発達したことを論述したものである。その論述は,具体的な資料にもとづいて展間され,説得力があり,年齢組織についてのすぐれた民族誌的研究として高く評価される。
  とくに社会内外の敵への対処という対敵論は,軍事的な年齢組織をもつ他民族の社会の研究にも適用できるだけでなく,個別社会を地域的枠組みのなかで研究していく新たな展開をもたらすものである。ただし,パリ社会とはちがって,世代原理や婚姻規制をそなえた年齢組織の研究にたいして,この視点がどの程度の有効性をもつのかという疑問も指摘される。さらに,どのタイプの年齢組織であっても平穏時にも持続してきたので,年齢組織の存在理由を包括的に理解するには,対敵論だけにもとづいた仮説では不十分ではないかと考えられる。
  これらの疑問が指摘され,今後の課題として残されているものの,栗本氏の本論文は,人類学において古典テーマになったかにみえる年齢組織をとりあげ,南部スーダン地域における現代的課題のみならず,歴史的視野をも組み込んだ新しい枠組みで分析したことは,きわめて高く評価されるとともに,この地域における民族誌的研究のいっそうの発展に貢献していく力量が十分そなわっていること確信させるものである。よってここに,本論文を第8回「日本アフリカ学会研究奨励賞」の受賞にふさわしい論文であると判断いたします。

【受賞者】 北西功一
【受賞対象業績】 “Seasonal Changes in the Subsistence Activities and Food Intake of the Aka Hunter-gatherers in Northeastern Congo”, African Study Monographs, 16(2), 73-118, 1995.

【講評】
  北西氏の上記論文は,コンゴ共和国北部の熱帯雨林に住むアカと呼ばれているピグミー系狩猟採集民集団の食料調達活動ならびに食物摂取の様子を14ヵ月にわたって追跡し,その季節変化を描き出し,その特徴を分析したものである。北西氏の論文の特徴はまず,14ヵ月という長期のフィールドワークによって非常に豊富な一次データを収集し,それをもとに生計活動の量的な把握をしっかりとおこなっていることにある。生計の量的な把握は生態人類学的研究では必須のことであるが,北西氏のデータの精度と量は従来の多くの研究のレベルをしのぐもので,今後の狩猟採集民研究にたいへん貴重な貢献をなすと考えられる。
  そのような資料をもちいた分析の結果もたいへん興味深いものがある。アカたちはかなりの期間,農耕民の村から離れて,森のなかで単独生活をするが,森の産物であるヤムイモをはじめ,イルビンギアなどの栄養豊富な野生植物性食物ならびに狩猟による獣肉,また蜂蜜やイモ虫などによって十分な食物をとりうることが示されている。これは最近問題となっている,森林地帯における狩猟採集民の生存可能性の議論にも大きな影響を与えるものである。また,これまでよく研究されてきたイトゥリなどのビグミー系狩猟採集民とかなり異なる生計のリズムを持っていることも明らかにされた。これも最近,大きな関心を呼んでいる,狩猟採集民の生活や社会の多様性を追求する上でたいへん貴重なデータを提供するものであるといえる。また従来よりも長いタイムスパンで狩猟採集民の生計をとらえる必要を,豊富なデータの分析によって示されたことも重要である。   以上のような論文の内容ならびに,論文をとおして推測されるデータの量と質,およびその研究姿勢を吟味すると,北西氏の研究の今後の展開にも大きな期待を寄せることができるものであり,「奨励賞」にふさわしいと考える。

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