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◆論評:第18回(2006年度)

【受賞者】 野元美佐

【受賞対象業績】 『アフリカ都市の民族誌―カメルーンの「商人」バミレケのカネと故郷』明石書店,2005年;論文「貨幣の意味を変える方法―カメルーン、バミレケのトンチン(頼母子講)に関する考察」『文化人類学』第69巻3号,353-372頁,2004年。

【講評】
  野元氏の著書・論文は,カメルーン共和国の首都ヤウンデに暮らすバミレケと呼ばれるエスニック・グループを取り上げ,「商才」に長けると見なされ,周囲からも肯定的評価を受けていない彼らが,都市のなかでいかに商才を使って自らの生活を築き,村の資源と町の資源を,彼ら独自の論理あるいは倫理観のなかで,バランスをとりつつ利用し,ダイナミックに困難な現実を生き抜いているかという実態を長期(1993年から2000年の間に,1996年7月~1998年10月の間を含む,4回,通算3年)のフィールドワークに基づいて分析・記述した民族誌である。 分析の中心は,バミレケの行うトンチンと呼ばれる頼母子講の経済的,社会的意味あるいは機能についてのものである。野元氏は,このトンチンという経済制度における貨幣(カネ)の意味,あるいはその経済的,社会的役割に着目し,トンチンがカネを貯めるという個人的行為をカネの意味と価値を変えて集団的行為に結びつける卓抜な金融システムであり,それを通じて,個人の経済行為としての蓄財が,贈与交換としての意味を付与されながら,人々の間の経済格差を顕在化せず,それによって人々のもてる者たちへの嫉妬をも多少ともかわしつつ,バミレケ社会のなかでの正当性を獲得していく様が,詳細に,生き生きと描写・記述されている。
  序章の中で野元氏は,「生活の側からの貨幣への働きかけを具体的に提示する事で,貨幣経済の浸透による不可逆的で画一的な破壊を被るひとびとの受難ではなく,自分たちで貨幣を書き換えていく創造的な実践を描きたい」と述べ,「三種類のカネ(貨幣)の回し方」すなわち,貨幣の量の変化,意味の変化,価値の変化に着目している。
  ここで展開されている貨幣論(貨幣がとりもつ社会の絆など)は,経済学の立場からは,これまで議論されてきたことであり,特別独創的とはいえないという意見もあったが,選考委員の一致した見解としては,野元氏が,これまでの文献を丹念に渉猟しつつ,諸学説を解りやすく解説し,自らの論考の位置づけと問題設定を行い,それを長期のフィールドワークに基づく具体的なアフリカの事例研究で検証しつつ,自説を展開している点,また人々の考えや心の動き,すなわち精神構造にまで踏み込んで分析・記述している点がたいへん説得的であり高く評価できる。その意味では,同氏の研究は,日本におけるアフリカの都市人類学的研究に対して,新たなページを拓く貢献をなしたと言うことができる。

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