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◆論評:第25回(2013年度)

【受賞者】 村尾るみこ

【受賞対象業績】 『創造するアフリカ農民―紛争国周辺農村を生きる生計戦略』昭和堂,2012年。

【講評】
  村尾るみこ氏の上記の著作について,研究奨励賞にふさわしいと評価する。
  受賞候補の著作は,アンゴラの国内紛争から逃れてザンビアヘ移住した「自主的定着難民」の生計の再編を追った民族誌である。ザンビア西部に居住するアンゴラ移住民という不安定な立場にある人々が,アンゴラ・ザンビア両国の政治経済の変化の中で生態的・社会的なニッチを探るなか新たな生計活動を創出していく過程を詳細に記述・分析している。本著作は,文化人類学的な参与観察から人々の日常的な生産活動と流動的な集団編成の動態を明らかにするとともに生態学や農学の手法を用いて植生,土壌といった自然環境に関する客観的なデータを提示している。
  本著作の調査の中心は,アンゴラ移住民によるキャッサバを中心とした生計活動である。所与の政治経済や生態的な制約の中でその土地に適しているとはいいがたいキャッサバ栽培を選択することで,彼らが故地にも移住先にもない新たな生計活動を創出していく過程が描き出されている。本著作は,現在に生きるアフリカ農民の動態を描くと同時に,アフリカ農民の移動と適応という特性を知るために重要な概念を示唆している。
  また,本著作は,アンゴラ移住民の生計活動の詳細な調査を通して自主的定着難民に関する言説への再検討を試みている。その試みは,文化人類学やアフリカ農民研究の枠を超えて,アフリカにおける国家形成の問題や,難民研究のような他の諸研究分野に相互連関している。学際的な研究の可能性と重要性を示した興味深い著作であるといえよう。
  ただし,その一方で既存の農民/農村研究に対して瞠目するような新たな知見を加えたというには不足感があることは否めない。今少し踏み込んだ調査と議論が望まれるがそれについては今後の著者の調査・研究に期待したい。
  よって審査委員会は,村尾氏の著作をアフリカ地域に関する学術研究に大きく貢献する業績であると評価し,今後の飛躍への期待とともに研究奨励賞に値すると判断した。

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