公開シンポジウム
世界観を拡げるアフリカ史 —アプローチを変えると見えない(歴史)世界が見えてくる—
趣旨
20世紀半ばまでの長いあいだ、アフリカには歴史がないと語られてきました。その背景には、歴史は国家単位で記述されるものであり、過去を探る手がかりは文字で書かれた史料にしか存在しないという固定観念がありました。しかしこうした考えに対して、20世紀後半以降、歴史学においても変革がおこりました。それまで取り上げられなかった口承伝承や遺物などの非文字史料が活用されるようになり、考古学や人類学、言語学といった他の学問領域との協働の重要性も認識されるようになります。これによって、旧来の歴史学が明らかにできなかった「アフリカの過去」が続々と掘り起こされるようになったのです。
日本のアフリカ研究においても、「歴史研究」の位置付けに変化が生じてきました。1997年に出版された『新書アフリカ史』(講談社現代新書)は、20 世紀後半の歴史学で生まれた「ニューヒストリー」 的方法論を採り入れ、それまでの国家単位の歴史(国家史)からアフリカの五大河川を基軸とした地域区分を用いた新しいアプローチを提示しました。近年では、日本アフリカ学会研究奨励賞で「歴史」をテーマとする研究が受賞することも珍しくなくなり、一昨年には『岩波講座世界歴史』で「アフリカ諸地域」をテーマとする巻(第18巻)が出版されるに至りました。
これらの成果は、20世紀後半以降、日本のアフリカ研究者が海外の研究者とも協力しつつ、分野を超えたさまざまなアプローチを取り入れ、アフリカの過去に迫ろうとしてきた努力によるものです。そこで今回のシンポジウムでは、歴史学、国際関係学、言語学、人類学等の異なる研究領域を専門とする研究者がアフリカの過去を明らかにするために採り入れてきた視点や方法を紹介することを通して、固定観念によって覆い隠されてきた「見えない世界」を見るためのアプローチについて皆さんと考えていきたいと思います。
日時
2024年5月19日(日)13時00分~14時40分
場所
大阪大学外国語学部箕面キャンパス 1階・大講義室
開催方法
対面のみ(オンラインでの配信はありません)
参加費
無料
定員・申込み
270名
申込み不要
プログラム
13:00‑13:05 | 趣旨説明 溝辺泰雄(明治大学) |
13:05‑13:20 |
「一皿の料理からみるアフリカ史:エチオピアのインジェラをめぐる歴史研究
の事例から」
石川博樹(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
|
13:20‑13:35 |
「比較言語学からみるアフリカ史:言語学が歴史研究にできること」
米田信子(大阪大学)
|
13:35‑13:50 |
「坑夫の語りからみるアフリカ史:地域研究・国際関係論的アプローチ」
網中昭世(アジア経済研究所)
|
13:50‑14:05 |
「移動の語りからみるアフリカ史:ベンバの人びとが語る移動の歴史とその
多声性」
杉山祐子(弘前大学)
|
14:05‑14:20 |
「日本語史料からみるアフリカ史:アフリカの脱植民地化期における日本との
交流と連帯」
溝辺泰雄(明治大学)
|
14:20‑14:40 |
質疑応答
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問い合わせ先
日本アフリカ学会第61回学術大会事務局
問い合わせアドレス jaas2024osaka[at]gmail.com(送信の際は[at]を@に代えてください)