日本アフリカ学会会員の皆様へのご挨拶

4月7日開催の理事会で、2024~25年度の日本アフリカ学会会長を務めることになりました。精一杯努力する所存ですので、会員の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

私は、1986年に本学会に入会しました。日本アフリカ学会は私にとって最初の学会であり、一貫して主要な学術活動の場になってきました。この学会は、私にたくさんのものを与えてくれました。学術大会、支部活動、学会誌など、本学会が提供する様々な場を通して、私はアフリカ研究の幅広さや奥深さに魅了され、実際にそうした研究に取り組んでいる方々との知己を得て、自らの糧としてきました。日本アフリカ学会がなければ、今の自分はありません。私は、この学会とそれを支えてきた方々に深い感謝の念を抱いています。

日本アフリカ学会の会員数は、ここしばらく八百数十人程度で推移しています。地域研究関連学会のなかでは比較的大きく、またその規模を維持している点で、活発な学会と言えるでしょう。その活発さは、アフリカに関する様々な学問分野の良質な研究に触れる機会によって担保されています。その機会を提供する場を充実させるよう、理事会として最大限努力してまいります。

日本のアフリカ研究を代表する学会として、本学会は様々な課題に直面し、取り組みを求められています。私はとりわけ次の五つの課題が重要だと考えています。

第一に、本学会のマルチディシプリナリーな性格を維持発展させることです。日本アフリカ学会の重要な特徴のひとつは、そこに集う学問分野の広さと相互交流の深さです。私は政治経済を専門としますが、人類学や霊長類学、医学や地質学など、本学会で知己を得た異分野の研究者から多くを学びました。多様な分野の研究者が集まる本学会の性格は、何としても大事にしたいと思っています。

多様な分野で良質な研究を生み出すためには、日本各地に居住する日本アフリカ学会会員に等しく活躍していただく必要があります。地方支部活動のお手伝いをすることは、本学会の長所を伸ばすうえでとても重要だと考えています。

第二に、国際的な連携の発展と強化です。松田前会長をはじめとする前理事会の尽力で、韓国アフリカ学会(KAAS)と協力関係が本格化しました。この関係を発展させ、他のアジア諸国のアフリカ学会にも協力関係を広げるよう努力したいと考えています。

第三に、日本に在住するアフリカ人研究者との繋がりを強めることです。近年、日本で学位を取るアフリカ人学生が増え、それに伴ってポスドクなどの形で日本に滞在するアフリカ出身の若手研究者も増えてきました。彼ら、彼女らに本学会を魅力的なものとすることは、理事会の重要な課題だと認識しています。

第四に、アフリカに関心を持つ人々への幅広いアプローチです。本学会の強みの一つは、実務家の方々がたくさん参加されていることです。さらに、アフリカに関心を持つ市民や学生など多様な方々を対象に、アウトリーチの戦略を練る必要があると思っています。

第五に、学会活動を支える制度的、財政的基盤の強化です。近年、学会活動の幅が広がり、必要とされる予算も増大しています。また、会員数の増加に応じて、学術大会開催校の負担も増えています。活動の基盤を確たるものにしなければ、日本アフリカ学会の発展はありえません。理事会として、真剣に取り組む必要があると考えています。

当たり前のことですが、会員の皆様のご理解とご協力がなければ、ここで述べた課題に取り組むことはできません。皆様とのコミュニケーションに努めて参りますので、忌憚のないご意見を賜れば幸いです。

私はアフリカ研究を始めて四〇年近くになりますが、素晴らしい学問分野だといつも感じてきました。アフリカからの学びは、自分を本当に豊かにしてくれました。二年の任期内にできることは限られていますが、アフリカ研究から、そして日本アフリカ学会から自分が受けた恩恵に感謝して、少しでも恩返しをしたいと考えています。

どうぞよろしくお願いいたします。

2024年4月30日
日本アフリカ学会会長
武内進一

※2017-:会長挨拶
※2011-2017:会長挨拶 (旧サイトにリンクします )