日本アフリカ学会日本アフリカ学会第57回学術大会

公開シンポジウム

アフリカ研究と社会との繋がりを考える:開発をめぐる対話(Utility of African Studies to the Society: A Dialogue about Development)

趣旨

研究と社会の繋がりは、古くて新しいテーマです。

研究のための研究であってはならないとか、研究者が象牙の塔に閉じこもることがあってはならないといった議論は、はるか昔からなされてきました。しかし最近、この点が様々な機会に強調され、研究が社会に役立つことが強く求められるようになったと私たちは感じています。「持続可能な開発目標」(SDGs)への貢献を大学が競い、研究がどの開発目標に貢献するのかを研究者に申告させる、といった動きはその一つでしょう。

SDGs の重要性や、現代社会が解決すべき深刻な問題に満ちていることに異論はありません。しかし、前述の動きに違和感を感じるのは、そこで「研究が社会に役立つ」というとき、「役立ち方」の回路が狭く捉えられる傾向があるのではないか、ということです。ややもすると、「役立つ」ということが、市場価値や政策への短期的な貢献と同一視されているのではないか、という懸念です。

こうした傾向が生まれる要因は複雑ですが、重要な背景として、近年の急速なグローバリゼーションとテクノロジーの進展があることは間違いないでしょう。この動きによって、これまで比較的市場から離れていた制度が次々に商品化、市場化され、ランキング付けされるようになりました。教育や研究がその影響を受けていることは明白です。一方で、グローバリゼーションやテクノロジーの進展は、逆の動きも顕在化させています。自国ファーストを称揚するナショナリズムが力を得て、ゼノフォビアが世界各地で顕在化するなど、テクノロジーだけでは解決できない問題に私たちは直面しています。

もとよりアフリカもこうした動きから無縁ではありません。むしろこうした動きから直接的な影響を受けていると言えるでしょう。アフリカ開発に関する議論は、近年顕著に IT を使ったビジネスへの傾斜を強めています。その一方で、脆弱なガバナンス、ゼノフォビア、和解や癒しといったテクノロジーだけでは決して解決できない問題が多々存在するのもアフリカなのです。

かかる状況の中でアフリカ研究に従事する者は、どのように社会との繋がりを捉え、どのような実践を行うべきなのでしょうか。そうした研究や実践は、いかなる形で現実社会にインパクトを与えることができるでしょうか。本シンポジウムでは、アフリカ研究者の取組みを通じてこうした点を考えたいと思います。

シンポジウムでは、日本、そしてアフリカの社会と様々な形で繋がりつつ、アフリカ研究やそれをベースにした実践を行っている研究者に、ご自身の取組みについてお話をいただきます。議論を噛み合いやすくさせるために、広義の開発に関わる研究をなさっている方々に問題提起をしていただきます。開発にトピックを絞るのは、そこで研究と社会の繋がり(あるいは緊張関係)が先鋭的な形で表れやすいからです。

スピーカーの皆さんには、①どのような研究を行っているか、②それがどのような形で社会に役立つと考えるか、③これからあるべき開発(と研究の関係)とはどのようなものか、に触れる形でご自身の取組みを紹介し、その可能性と課題についてお話しいただきます。その後、外交、援助、ビジネスなどでアフリカに関わる実務家の皆さんやアフリカを専門としない研究者の方々に、こうしたアフリカ研究者の実践がどのように見えるのか、コメントをいただきます。最後に、報告者、コメンテーター、そしてフロアを交えて、研究と社会の繋がりに関して意見交換を行います。

私たちは、研究を社会に還元するための多様な回路があると考えます。研究と社会の多様な繋がり方を認識することが、アフリカ研究をより豊かにし、研究者と実務家との間に建設的な対話を可能にすると信じています。このシンポジウムがそうした対話へと繋がるよう、主催者として努力したいと思います。

2020年4月17日
日本アフリカ学会第57回学術大会実行委員会

日時

2020年5月24日(日)13:00〜15:30

場所 (Update

Zoom を用いオンラインにて開催。同時に Youtube によるストリーミング配信を行う。

YouTube ライブ配信 URL:https://youtu.be/J9iuiWQMtB4

※録画の放映は致しませんのでご留意下さい。また、スクリーンショットや動画記録などはご遠慮下さい。

定員・申し込み

300名・参加希望者はシンポジウム参加申込フォームから登録してください。

【申し込みは終了しました】

プログラム

13:00-13:10 趣旨説明・司会 武内進一(東京外国語大学 教授)
13:10-14:10 報告①増田研(長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究科 准教授)
報告②丸山淳子(津田塾大学学芸学部多文化・国際協力学科 准教授)
報告③竹ノ下祐二(中部学院大学看護リハビリテーション学部理学療法学科 教授)
報告④黒崎龍悟(高崎経済大学経済学部国際学科 准教授)
報告⑤杉村和彦(福井県立大学学術教養センター 教授)
14:10-14:40 コメント①加藤隆一(国際協力機構アフリカ部長)
コメント②合田真(日本植物燃料)
コメント③岩崎稔(東京外国語大学 教授)
14:40-15:30 ディスカッション
閉会の辞 武内進一

お問い合わせ

〒183-8534
東京都府中市朝日町3-11-1
東京外国語大学現代アフリカ地域研究センター気付
日本アフリカ学会第57回学術大会事務局
E-mail: jaas2020.tufs(at)gmail.com((at)を@に入れ替えてください)

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