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卓越した大学院拠点形成支援補助金「コンフリクトの人文学国際研究教育拠点」主催
卓越セミナー第12回(「コンフリクトの人文学セミナー第96回」)

日時:2014年3月14日(金)午後3時~5時
場所:大阪大学吹田キャンパス 人間科学研究科
(予約不要・参加無料)

講演タイトル:
「所有とは 恐れである―ニジェール西部農村社会の土地制度をめぐって―」

講師:佐久間寛氏 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・研究機関研究員

趣旨:
ニジェール西部での調査中、ある人物のものとされる土地がじつはその人のものではないとの説明を受けたことが幾度となくあった。いわば現在の「所有者」とは別に真の「所有者」がいるという説明だった。問題となるのはたいてい奴隷や異民族出身者の土地だったが、それらは彼らがすでに数世代にわたって相続してきた土地であり、たとえ真の所有者を自認する側が裁判を起こしたとしても、現所有者に不利な判決がでるはずはなかった。にもかかわらず、現所有者に話しの真偽を問うてみると、思いがけない反応が かえってきた。彼らは一様に「緊張」し(「おまえ、誰からその話しを聞いた?」)、祖先が土地を取得した経緯を「必死」に説明し(「あの土地はたしかにわたしのものだ!」)、自説と相容れぬ説明を「嘘」と断じた。外部者の視点にたつ限り、奴隷や異民族が土地をもたぬとは差別的観念にすぎない。とはいえ、その彼らが疑いなく真の土地所有者だとすると、かくも防衛的な反応がなぜ生じたのかが分からなくなる。重要なのは、誰が真の土地所有者かと問うことではない。この社会で土地を所有するとはいかなる事態かと問うことである。

本発表では、ニジェール西部農村社会の土地制度を、従来の研究では見過ごされがちだった「情動」という側面から考察する。導かれるのは、 土地の惜しみない贈与者であると同時に呵責無き収奪者でもある「他者」への「畏怖」に支えられた土地制度の姿である。私有にせよ共有にせよ、他者を排して「神聖にして不可侵な権利」を確立した西欧近代的な所有とは異なり、この社会では、他者への畏怖に貫かれることなくして土地は所有しえない。つまるところ、所有とは恐れなのである。

講師プロフィール:
さくまゆたか。1976年生まれ。東京外国語大学大学院地域文化研究科退学。博士(学術)。現在、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所研究機関研究員。おもな論考に、「交換、所有、生産:『贈与論』と同時代の経済思想」(モース研究会『マルセル・モースの世界』平凡社、2011年)、「世界システムの危機とア フリカ:地政文化論を中心に」(『情況:変革のための総合誌(第4期1/2)』情況出版、2012年)、『ガーロコイレ:ニジェール西部農村社会をめぐるモラルと叛乱の民族誌』(平凡社、2013年)。

チラシURL:
http://www.hus.osaka-u.ac.jp/announce/takuetsu_seminar_20140314.pdf

東館は、万博外周道路側の別館です。大阪大学人間科学部
(吹田キャンパス)への交通アクセスは
http://www.hus.osaka-u.ac.jpをご参照ください。

お問い合わせ先:
卓越した大学院拠点形成支援補助金
「コンフリクトの人文学国際研究教育拠点」事務局
E-mail: takuetsu-jimu[at]hus.osaka-u.ac.jp
Tel: 06-6879-8085(人間科学研究科・人類学研究室)
※[at]は@に変更してください。

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